「わかりました」の使い方
A:このサイトは購入への誘導が甘いから売り上げが伸びてないんだろうね。
CTAボタンを少し多めに入れてみるといいよ。
B:なるほど。わかりました。
A:ご依頼の件ですが、弊社では引き受け兼ねます。
B:そうですか。わかりました。
A:この書類、明日までに仕上げておいてくれるかな。
B:わかりました。
アドバイスしてもらったり、わからないことを教えてもらった時。
相手の考え、意思、答えを聞いた時。
何かを依頼された時。
私たちは普段、様々な場面でこの「わかりました」という表現を使っています。
しかし、この「わかりました」という表現、次のような使い方もありますよね。
「わかります」
「わかりましたよ/わかりますよ」
普段特に意識していませんが、私たちはこれら一つ一つをきちんと場面や発話の意図によって使い分けています。
しかし、それぞれを実際にどのように使っているかを考える機会はほとんどありません。
それは、自分自身が使い方で迷うことはありませんし、日本人同士なら間違った使い方を聞くこともないからです。
では、相手が外国人だったらどうでしょうか。
外国人といえども間違った使われ方をすると、違和感、時には不快感を感じます。
僕はほぼ毎日外国人と接しているのですが、違和感を感じない日はありません。
日本語を教える立場にあっても感じるのです。
日本語について普段考える機会のない方々にとっては違和感というより、
「不快」に感じることの方がもしかしたら多いかもしれません。
今回は日本で働く外国人たちの
「わかりました/わかります/わかりましたよ」
の使い方について考えてみたいと思います。
ちょっとした違いなのですが、相手への伝わり方にはそれぞれ大きな違いがあります。
そして、使い方を間違えてしまうと大変なトラブルやミスコミュニケーションを招きかねません。
わかりました
A上司 B部下(外国人)
A:昨日受注した〇〇社の案件、どうなったかな?
B:あ、課長と相談してチームを組むことになりました。
A:そう、じゃあ、メンバーが決まったら、教えてくれる?
B:わかりました。
B:ここのバナーのサイズ調整はどうやってやればいいんですか?
A:CSSの数値設定を変えればいいんだよ。
B:わかりました。ありがとうございました。
どちらも何も問題はありません。
わかります
A:クライアントの〇〇社、知ってる?
B:はい、知っています。先月打ち合わせで何度か伺いました。
A:あそこ、なかなか上の許可が下りなくて大変なんだよな。
B:わかります。前回も動き出すまでかなり時間がかかりました。
B:ここのバナーのサイズ調整はどうやってやればいいんですか?
A:CSSの数値設定を変えればいいんだよ。
B:わかります。
上の会話は何も問題はありません。
「わかります」は相手の言ったことに対する「同意」として使うと問題はない、ということがわかります。
では、下の会話はどのように聞こえるでしょうか。
わからないことを聞いているということは、相手から新しい情報が与えられるということです。
自分が欲しい情報を相手が提供してくれる訳ですから、
それを理解したということを相手に伝えなければなりません。
「わかります」と言えば、同意を表すことになります。
相手が教えてくれた新しい情報に対して「私もそう思います」と言う。
変だと思いませんか?
これが相手にどういうメッセージを送ることになるかというと、
「知っている。自分もそう思っていた」というようなことを伝えることになってしまいます。
相手にしてみれば、聞かれたから教えてあげているのに、
「そうそう、自分もそう思っていた。知っていた」というメッセージが送られてきたら、
不快な気持ちになっても不思議はありませんよね。
ここでミスコミュニケーションが生じています。
ちなみに、「わかっています」もこのような意味合いになりますので、
周りで使っている外国人がいたら、注意してあげるといいかと思います。
わかりましたよ
この最後の「よ」がなくても話し手の意図が変わることはありません。
「わかった」ことは、「よ」があってもなくても相手に伝わります。
しかし、この一字「よ」があるのとないのとでは、
聞き手の受ける印象は大きく違います。
「よ」には自己主張や新しい情報を伝えるという用法があるからです。
A:昨日受注した〇〇社の案件、どうなったかな?
B:あ、課長と相談してチームを組むことになりました。
A:そう、じゃあ、メンバーが決まったら、教えてくれる?
B:わかりましたよ。
B:ここのバナーのサイズ調整はどうやってやればいいんですか?
A:CSSの数値設定を変えればいいんだよ。
B:わかりましたよ。
「自分の発言が原因でBは不機嫌になったのか」と思ってしまいませんか?
上の会話ではAの報告することが面倒、下の会話では自分から質問しておいてキレる。
どちらもコミュニケーションに失敗している例です。
まとめ
私たちが普段何気なく使っている返事、受け答え、同意の表現など、
中には外国人にとっては区別が難しく、注意が必要ものは数多くあります。
その都度教えてあげることも大切ですが、私たちも自分たちの使っている言葉についてもう少し興味を持ち、
考えることも必要なのではないかと思います。
日本語はそれほど簡単な言語ではない。
大事なことは、これを我々が知ることです。
コンビニ、居酒屋、回転寿司、街中…
今後、外国人は私たちにとって、より身近な存在になってきます。
この記事を読んで、
「今までそんな違いについて考えたことなんてなかった」
「イラっとしてたけど、確かに日本語って難しいよな」
と考え方を変えてくださる方が少しでも多くなればと願います。