日本語は外国語

「大丈夫」YES? NO? どっち?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る
日本語教育の専門的な観点からではなく、あくまで一般企業内で外国人に接した時に聞くであろう日本語の間違いと、なぜそれが起こるのかについて、これまで多くの留学生を見てきた日本語教師としての分析をわかりやすく述べたいと思います。

社内でのコミュニケーション改善に役立てていただければ幸いです。

言葉の使い方は変化する

言葉の使い方は時代とともに変化します。

江戸時代後期までは敬語だった「御前(おまえ)」という言葉も、
現代では敬意を表すことはなく、同等か目下の人間に対して使う言葉に変化しました。

最近ですと、「全然」という言葉。

「全然〜ない」というように否定表現と呼応する使い方だけでなく、次のようにも使われています。

「え、これ初めて作ったの? 全然美味しいじゃん

「面倒で有名な部長って聞いていたんですが、お会いしたら全然いい人でした

肯定的な表現と一緒に使うことが珍しくなくなりました。

もっとも、この「全然〜だ」と言うときも、
「その予想や情報と違う」
という否定の部分が省略されているだけなので、
元の使い方から大きく離れているとも言えません。

全然まずくない、美味しい

全然面倒じゃない、いい人

しかし、用法が広くなったということは事実です。

「大丈夫です」

このように、言葉は時代とともに変化(進化?)していくものですが、
今回はその中の一つでもある「大丈夫」を取り上げてみたいと思います。

普段外国人に日本語を教えている中で、
我々日本人と外国人の使い方の特徴を考えてみようと思いました。

大きく分けて二つの「大丈夫」の使い方について分析してみます。

1.日本人、外国人に多い「いらない/しない」の意味の「大丈夫」

2.外国人が使うこちらの指示やアドバイスに対しての「大丈夫」

1.「いらない/しない」の「大丈夫」

(コンビニで)

「袋にお入れしますか?」
「あ、大丈夫です」

 

「これ、美味しいよ。一つどう?」
「オレは大丈夫」

 

「自分も使うなぁ」という方が結構多いのではないでしょうか。

しかし最近、この「”大丈夫”の多用」が問題になっています。

本来であれば、下のように全文言うべきなのですが、
前の部分が丸々省略され、「大丈夫」だけになったと考えられます。

袋に入れてくれなくても私は いいです/結構です/大丈夫です」

もらわなくても/食べなくても自分は いい/大丈夫」

でも、「大丈夫」の意味はもともと「OK」という意味です。

大事なのは「何がOK」なのか、です。

「袋に商品を入れること」がOKなのか、「入れないこと」がOKなのか…

それを省略して「OK」だけを言うからわかりにくくなるのです。

相手によっては、話者が意図したことと正反対の意味で受け取る人もいるでしょう。
そうなると、お互いのコミュニケーションは正確に行われていないということになってしまいます。

次の会話などは「参加する」と理解する人もいるでしょうし、
「今回は遠慮する」と捉える人もいるでしょう。

「金曜の懇親会、どうしますか?」
「あ、(今回は)大丈夫です」

もちろん、会話をするときには言語情報だけではなく、
顔の表情声のトーンなどもコミュニケーションでは非常に重要な役割を果たします。

上の会話も声のトーンや顔の表情によるところも大きいとは思いますが、
誤解を招きやすい答え方ではあることは確かです。

また、メールなどの非言語情報がゼロのものだと、判断はかなりむずかしくなります。

便利な「大丈夫です」を我々が使うことで、一緒にいる外国人も真似をしてしまう。

そういう危険性もある表現です。

我々も日頃から曖昧な意味に取られてしまう言葉の使い方には十分気をつけるべきです。

2.外国人の大丈夫

これまでは主に日本人に多い「大丈夫」の使い方の話をしました。

一方、外国人の中にはこんな「大丈夫」の使い方をする人がいます。

「報告書はもう少しわかりやすく書かないと、読む人が困るよ」
「あ、大丈夫です」

 

「漢字は難しいかもしれないけど、覚えた方が生活に役立つと思いますよ」
「大丈夫です」

(期限守らなかった人に対して)
「書類の提出期限は必ず守ってくださいね」
「大丈夫です」
「(いや、こっちが大丈夫じゃないんだよ!)」

指摘、忠告、アドバイス、相手のことを思って言ったことに対して
「大丈夫」と言うのはどうなのでしょうか。

このような返答の仕方を頻繁に外国人から聞くのですが、
これは単なる日本語だけの間違いではなく、
文化的な違いも強く影響していると最近思うようになりました。

どういうことかと言うと、

「指摘、アドバイス、忠告」を真剣に捉えていない

こんな理由もあるのではないか、ということです。

「そんな指摘はいらない」「わかっているよ、そんなこと」

と言った主張をしているのではないかと思うのです。

もしそうだとすると、少し厄介です。
日本語だけの問題ではないからです。

この使い方も、他の記事で述べたように相手側が不快になる可能性が高いですし、
ましてそれをわかっていて使っているなら、別の問題になります。

日本人の中にもいますが、
外国人にも人の忠告や指摘を真面目に受け取ろうとしない人が少なからずいます。
プラス、そこに文化の違いが絡んできます。

外国人の場合は、決して悪意があるわけではないと思います。

「そんな小さいこと」「そんなこと気にしなくていいよ」

よく言えばおおらかな文化からくるものでしょう。

「日本人は色々と細かすぎる…」

そんな細かさに嫌気がさしている外国人は多いと思います。

しかし、です。

日本の社会で働く以上、誤解されて自分の評価を下げたくはないでしょうし、
相手に不快な思いをさせることのリスクは十分理解しておくべきだと思います。

前述したような「指摘、忠告、アドバイス、相手のことを思って言ったこと」に対して
「大丈夫」という返事をすることには大きなリスクが伴うことを彼ら自身が理解するべきです。

ただ、僕自身もこの「大丈夫」を聞くたびに彼らに話をするのですが、
気持ちよく理解してもらうのはなかなか難しいというのが感想です。

でも、諦めずに何度でも話をしていこうと思っています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

コメントを残す

*