にほんご分析

「全然いいよ!」という日本語の使い方は果たして正しいのか?

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「全然」の使用範囲問題

A【全然おいしくない/全然飲まない】
B【全然おいしい/全然飲む】

ここ何年か、Bの使い方をよく耳にしませんか?

このような使い方は正しいのか誤りなのかという議論(?)や、「このような使い方は好きではない。気になる」という意見もちらほら聞きます。

自分の言語活動を振り返ってみると

使っています、自分も(笑

じゃあ、この使い方は本当のところどうなのか?
というお話です。

まずはBの具体的な使い方です。

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「初めて作ったから味の保証はできないけど

「いただきます。 うん、全然(まずくない)おいしいよ!」
「(おいしくないと思っていたけど))全然 (まずくない)おいしいよ」
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「全然+〈否定〉」が正しい使い方。
上のように「全然+〈肯定〉」に見えるが、
実は( )の否定部分を省いているだけ

これが一般的な解釈ではないでしょうか。

要するに言葉として出ているものだけで判断すると文法的間違いに見えるが、元あったものを省略しているだけと考えればそうとも言えない、という解釈です。

ただ、よく見ると否定部分は「ネガティブ語+〈否定〉」、つまり意味としてはポジティブな意味で使っているのがお分かりでしょうか。
「まずくない」の部分です。

「まずい」 ネガティブの意味
「~ない」 否定

【否定+否定=肯定】

次にこの2つを見ていただきたいのですが、明らかに違いますよね。

・全然おいしくない
・全然まずくない

形こそ否定 のないを使っているという点において同じなのですが、下の方は意味がポジティブなのです。「全然おいしい」というのは、つまり「まずくない」を「おいしい」で言い換えているだけということになります。
(厳密には「まずくない」と「おいしい」は同じではないのですが)

という事は、「全然+〈肯定〉」は正しいということでしょうか?

実は昭和10年ごろまで「全然+〈否定〉」の用法はなかったと言われています。明治・大正期は「全然」を「すべて/すっかり」の肯定の意味で使っていたのだとか。
また、多くの日本語言語誌の中でも「全然+〈肯定〉」という使い方が50%を超えていたという調査結果もあります。

結論から言うと、

「全然+〈肯定〉」
「全然+〈否定〉」

どちらも間違いではありません。

ただ、現実的には「全然+〈肯定〉」を間違いと感じる人が多いのも事実。
言葉というものはいくら「これがルールで正しい!」としたところで、現代では使う人間が「それはおかしい」「違和感あるな」と感じたり、実際に使われる場面が少ないのであれば社会には受け入れられていない表現である、という見方もできます。

その時代に、その時代に生きる人たちに使われている言葉。
ほとんどの人が意味を理解し、意思の疎通も問題なくできてるのであれば、それは正しい言葉として使用していいのではないか。

基本的に僕はそんなスタンスです。
文法的な正確さより実用性の大切さを取る、とでも言いましょうか。

ただ、ビジネスシーンなどでは言葉遣いに敏感な方も多くいますし、細かいところを突かれてしまう、なんてことも十分に考えられます。
また「言葉を知らないヤツだ!」と思われる可能性もまた。

場面や相手に適した言葉の使い方を意識する。
これができる人ほど自分をうまくブランディングできているのかもしれません。

*「大丈夫」と「全然」についてはこちらの記事で書いています。

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