異文化コミュニケーション

「マズローの5段階欲求」と外国人を取り巻く環境

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空腹では仕事に身が入らない。 眠ければ勉強には集中できない。

もし相手が『マズローの欲求5段階』でいうピラミッドの一段階目にいるとしたら。

歯を食いしばって異国で必死に “生きている” 彼らに対して、私たちはついこんな言葉をかけてしまいがちです。

「健康は大事。生活には十分気をつけないとね」
「日本の友達とか相談できる人を作りなよ!」
「やりたいことは?何でもできるんだから頑張りなよ!」

食欲、睡眠欲といった生きる上で必要な基本的で本能的な欲求、つまり生理的欲求を満たすことで精一杯の彼らにこの「励まし」はかえって酷だと思うのです。

言われなくたって彼らだってもっと楽しみたい、成長したい、自分を広げたい、そう思っているはずです。今と違った境遇なら…。でも、まず向かい合わなければならない事が目の前にあるのです。

“生きる” こと

そんな現実の中で彼らは日々もがいているのです。

主に留学生や技能実習生と呼ばれる人たちに該当することが多いのですが、彼らを取り巻く環境についてはお聞きになったことがあるのではないかと思います。

そもそも日本に来ること自体で多くの借金をしているケース、その借金の返済や家族への仕送り、また自身の進学のため(入学金や授業料)の貯蓄、そして日本の高い物価(家賃や交通費)…

決して恵まれているとは言えない労働環境で身を削って働いたお金の使い道はというと、自分の嗜好だけでなく生理的欲求を満たすことさえ優先順位を下げざるを得ないものなのです。

先ほど挙げた技能実習生の労働環境で言うと、受け入れ企業の7割近くが「基準に違反している」と認定されているというデータもあります。

もちろん、誰かに強制されたわけではなくあくまで自分たちの意思で日本に来ています。正直に言えば、現状では彼らの待遇や生活を変えるなど、私たちに直接的にできることはないと言っていいでしょう。

しかし彼らと接していて、彼らを身近で見ていて感じるのは、冒頭で話した「がんばれ!」という励ましが必ずしも適当ではないことがあるということ。そして、もう十分すぎるほど頑張っているということです。

では、私たちには何ができるのか?

僕は 聞いてあげること だと思っています。

自分の価値観を押し付けない。
自己満足のためのアドバイスはしない。
ただ彼らの話を聞いてあげる。

それだけでいいのです。

そんな応援の形もあるのではないでしょうか。 身近に、頑張っている、もがいている外国人の方がいるという方の一助となれば幸いです。

*外国人留学生の現状についてはこちらの記事でも書いています。

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