日本語教師

外国人留学生の現状 留学生の国籍

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留学生の国籍Top3

現在、日本には27万人ほど(文科省)の外国人留学生がいて、
そのうち日本語教育機関に属しているのは5万人ほどだと言われています。
(平成29年度/日本語教育振興協会)

ここ数年の国籍順を見てみると、次のようになります。

1.中国

2.ベトナム

3.ネパール

この順位が5年ほど変わっていません。

その他も、ほとんどがアジア圏からの留学生です。

欧米からの留学生を受け入れている日本語教育期間もあるようですが、学生数は少ないのが現状です。

そのためクラス授業を行う日本語学校では国籍の偏りが激しく、
1クラス丸々同じ国籍、というクラスになってしまうことも珍しくありません。

学校側としても募集の時点で国籍にバラつきをもたせたり、
色々な国へ行って集客をしたりと努力はしていますが、
やはり日本にくる絶対数を考えると
偏りが出てしまうのは仕方がないといったところのようです。

アジア圏が多い理由とその弊害

これには、いくつかの理由が考えられます。

・自国から比較的距離が近いこと
・経済的に恵まれ治安も悪くないこと
・今後も日本との繋がりが今以上に見込まれ、
 仕事の面でも日本語を学ぶことにメリットを感じること

などが挙げられると思います。

当然、国籍に偏りが出ることによる弊害もあります。

・母語の使用による日本語力の伸び悩み
・コミュニティーが出来上がってしまい日本社会にコミットしようとしない
・様々な国籍の人間が集まることでお互い学べるはずのことが学べない

この国籍の偏りをなんとか変えようと各日本語学校努力をしているようですが、
そもそも他の地域から日本に来ようと思う人自体が少なければ、
努力の効果もそう期待できません。

それに、日本語学校もビジネスです。

国籍の偏りができても、まず学生を集めることです。

「お客様」が集められなければ、日本語教師も廃業になってしまいます。

国籍 Top3

次に、国籍による学生の傾向です。

中国

一昔前と違い(昔は「出稼ぎ」でした)、比較的富裕層が来ることが多く、
アルバイトをしなくても生活していける留学生が増えました。

その反面、昔と違いガッツがある学生がほとんどいなくなってしまいました。

少し言葉が強いかもしれませんが、最近は恵まれている分、

「軟弱な若者」
「親に言われていただけのモチベーションの低い若者」

が増えたように思います。

留学目的も以前とは変わり、大学、大学院やパティシエ、パン、日本料理、ファッションの専門学校に進学、
というように学歴とトレンドを目的に留学するのが主流になってきました。

ベトナム

とにかくお金がありません。

生活費、授業料を自転車操業でやりくりをしている留学生がほとんど。
そのため、来日して日本語もままならないうちから生活のために働き始めます。

最近外国人のアルバイト店員をよく見かけるようになったと思いませんか?
回転寿司、コンビニ、ファストフード、居酒屋…

でも、これら接客業の店で働いている外国人は比較的恵まれている留学生と言えると思います。

日本語ができなくてお金もない学生が、まずするアルバイトは「運送会社」です。
もう少し詳しく言うと、荷物の配送センターです。

私たちの現在のネットでの買い物事情を考えれば、
人手不足を解消すべく彼らが救世主になるのは容易に想像できるかと思います。

彼らはそこで荷物の仕分け作業を深夜から朝にかけて行っています。

日本語ができない、でも働かなければならない。
あるのは深夜の過酷な仕事だけ。
学校にも行かなければならない…
(留学ビザなので出席率が下がると次のビザが下りません)

まさに負のスパイラル、悪循環です。

ほとんどの学生が専門学校への進学を目指しますが、
規定の28時間/週を超えて働いていたため進学先でビザが更新できない、
というケースも最近ちらほら聞きます。

学費を払うために働いたのに、働いたせいでビザが下りなくて帰国を余儀なくされる。

本末転倒です…

今後、受け入れ時の審査の見直し、留学生に対する補助、
など何らかの対策が必要になってくると思います。

ネパール

ここ数年で増えてきました。

僕自身、まだ彼らに教え始めて2年弱しか経っていませんが、
礼儀正しく、時間はしっかり守るという印象です。

ただ、彼らもお金はありません。

ベトナム同様、深夜のアルバイトから始め(コンビニに卸す弁当の工場も最近よく聞きます)、
慣れてくるとファストフード店や飲食店、コンビニなどで働くようです。

深夜働いていても、彼らはしっかり学校には来ます。

キャラクターは皆明るく、挨拶や礼儀などは国で教育されているのか、
比較的に日本人に近く、人当たりはいいと言えるかもしれません。

彼らも専門学校への進学が大半で、
専門学校側も就職口の斡旋や寮の完備など受け入れ態勢を整え、留学生の獲得には必死です。

男子学生は車の修理関係の専門学校へ進学し、
その後自動車メーカーに就職(整備)、というパターンも最近増えてきました。

留学生たちの現状と今後の課題

国、人によって、どのような留学生活を送るかは大きく異なります。
経済状態、どのような教育を受けてきたか、価値観、どんな目的で日本に来たか…

ほとんどの留学生に共通して言えることは、
みんなとても苦労しながら留学生活を送っているということです。

なかなか日本語が上達しなかったり、授業中寝てしまったりしているのを見ると
不快な気持ちになることもあります。

しかし、彼らの送っている生活を自分が同じように送れるか、
と聞かれたら
「できない」と僕は迷わず答えるでしょう。

マズローの欲求5段階説というのをご存知でしょうか?

人間の欲求はピラミッドのように5段階に構成されていて、
低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲すると言われています。

この低次に分類される欲求が「外的に満たされたい」というもので、
『生理的欲求』『安全欲求』の2つです。

「食べる」「飲む」「寝る」「健康」「雨風しのげるところで生活したい」
といった超基本的欲求です。

生活がこの段階にある留学生に、それより高次の内的欲求である
「尊厳欲求」や「自己実現欲求」を求めても、それは土台無理な話なのです。

最後に

日本語「学校」、日本語「教育機関」と言われてはいますが、
その言葉だけでは到底定義できないそれぞれの生活に向き合った「手助け」が
我々日本語を教える者や教育機関には求められています。

学校に通うことにそれほど苦労したことがない私たちには
イメージしにくいかもしれません。

国、自治体、教育機関などより、
日本語を教える人間は彼らに一番近いところにいて彼らを見ています。

私たちもしっかりと現状を訴えるべく声をあげ、
その声が然るべきところに届き、
今や少子化日本、労働力不足の日本の救世主である彼らが
意義のある留学生活を送れるようになることを切に願います。

今後、日本語を教えることで彼らに接することのある方は、
このような現状を知っておいていただいた方がいいかと思います。

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