日本語は外国語

「開く」と「開ける」 「割る」と「割れる」 

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日本語教育の専門的な観点からではなく、あくまで一般企業内で外国人に接した時に聞くであろう日本語の間違いと、なぜそれが起こるのかについて、これまで多くの留学生を見てきた日本語教師としての分析をわかりやすく述べたいと思います。

社内コミュニケーション改善に役立てていただければと思います

自動詞(じどうし)他動詞(たどうし)

日本語を母語としない外国人が日本語を使う時に苦労するものの一つが、
この自・他動詞の正しい意味の理解とその使い方です。

動作動詞の分類に使う言葉ですが、
全ての動詞に自動詞と他動詞があって対応しているわけではありません。

「行く」「食べる」「飲む」「書く」…など対応のない動詞も多くあります。

行為の対象の状態変化に無関心な動詞は自動詞しかないという共通点もあるようです。

「自動詞」と「他動詞」とは

そもそも、日本語教育や日本語学習に携わっていなければ
「自動詞・他動詞」という言葉自体に馴染みがない方がほとんどではないかと思います。

専門的な話はここでは脇に置いておき、簡単に説明すると次のような感じになります。

自動詞ものに焦点を当てて言う/動作の対象を必要としない

他動詞人がすることに焦点を当てて言う/動作の対象を必要とする

具体例を出してみると、

・ドアが開いた 【自動詞】

・(人が)ドアを開けた 【他動詞】

「今ドアが開いている」という状態はどちらも同じです。

ここが外国人学習者には本当に理解の難しいところのようです。

「同じことが起きて、その同じ結果の状態を言っているのに、
なぜ言い方が二つある(動詞が二種類ある)んだ」

となるのです。

確かにその通りです。

では、上記の二つの文は、なぜ分けて言う必要があるのでしょうか?
言い方が二つある以上、何か理由があるはずです。
それは何なのでしょうか。

「ドアが開く」

誰がするのか、つまり人は関係がありません。
ドアがどうなのかを言いたい時にはこちらを使います。

具体的には、

「このドアは壊れていて開かない」・・・ドアの特性について説明する
「入口のドアが開くと観客がなだれ込んで来た」・・・ドアの状態の変化を表す
「前に立てばセンサーでドアが開く」・・・自動のものについて言う

こんな風に私達は使っているはずです。

物である「ドア」に話の焦点を合わせている時に使うということです

「ドアを開ける」

自・他動詞の定義に書いたように、誰がしたかを言います。

「暑いからドアを開けていい?」・・・自分がすることを言う
「ドアを開けてください」・・・誰かに何かをすることを依頼する
「ドアを開けてはいけない/開けなさい」・・・行為を禁止したり命令する時

いずれも、必ず「誰か/人」の行為を述べています

たとえ外国人が自・他動詞を逆に使ってしまっても
コミュニケーション上問題になることはほとんどないと思いますし、
相手に失礼になることもありません。

それに、我々日本人も彼らが何を言いたいかを推測してあげることはできます。

トラブルになりかねない間違い

しかし、です

次のような場合、業務上で何らかのトラブルが起こる可能性がありますので、注意が必要です。

「プレゼンで使う資料、破れてしまいました

「プレゼンで使う資料、破ってしまいました

上のドア同様、「今、資料は破れている」ことはどちらも変わりません。

しかし、私たち日本人がこの二つの文を見ると、明らかに違いますよね?
その違いがポイントになります。

ドアの場合は逆に使ってしまっても、大した問題にはなりません。
しかし、上で取り上げた例では「あぁ、資料が破れているんだな」だけでは済みません。

「大事な資料を君が破ったのか?」

ということになります。

ここで、先ほどの自動詞・他動詞の定義をもう一度思い出してみてください。

自動詞…ものに焦点を当てて言

他動詞…人がすることに焦点を当てて言う

例えば、自分のミスで資料が破れたのなら皆さんはどちらを使いますか?

「資料を破ってしまった」

こちらを使いませんか?

自分のミス、自分がしてしまったということを言おうとするからです。

相手に詫びる気持ちもあるでしょう。

「資料が破れてしまった」

これだと、誰がしたのかに言及しない言い方になってしまいます。

あくまで、資料について言っているだけなのでこうなります↓

誰がしたかに言及しない責任の所在をはっきりさせない私じゃない

聞く人によっては「責任放棄」「無責任」に聞こえかねませんよね。

自分がしてしまったことなのに、
それを相手に伝えないというのは多くのトラブルを生みかねません。

単なる「自・他動詞の間違い」では済まなくなります。

また、こんな身近な場面での会話でも。

 「ここにあったドーナツは?」
 「食べちゃったよ」
 「え!あのドーナツ、残しといたんだよ」
 「だから食べたんだよ」
 「『残った』じゃなくて、『残した』んだよ」
 「???」

どうすれば?対処法

日本語を教える時には、対になっている自・他動詞をセットで覚えさせるということはしません。
それをしたところで、どちらをどんな時に使うかを理解することには繋がらないからです。

「二つあるのは知っているけど、今はどっち?」

これでは意味がありません。
しかし、こういう人は結構多いんですね。

どうしてこのように「知ってはいるけど、使い方がわからない」となってしまうのかと言うと、
日本語を単なる知識として捉えているからだと思います。

言語には意味があり、相手に何かを伝えるためのものです。

相手にどのように伝わり、どのように捉えるかは非常に大切です。

自・他動詞で言えば、
「ドアを開ける」「ドアが開く」というように助詞と一緒にフレーズで覚え、
「を」を取るときは「人が〇〇をする」、「が」の時は「もの」と覚える。

ただ、それだけだと自・他動詞に関しては使い分けが難しいのも事実です。

「開く(ひらく)」は自・他動詞が同形です。

「彼は蓋を開いた」
「蓋が勝手に開いた」

「越す/超える」は同じ意味で用いられます。

電車が山を越す。
電車が山を越えた。

普段から、辞書だけでなく、Googleを辞書として使う。

調べる言葉を入力すると出てくる多くのサイトタイトルを見るのは非常にオススメで、言語の学習には有効です。

僕自身も英単語やフレーズを調べるときには必ず検索サイトでも調べます。

「どういう使い方がされているか」が大事で、
それがわからないと使えるようにはなりません

調べてみると、そんな使い方をしているサイトは一つもなかった。
こんなこと、よくあるんです。

また、よく言われることですが、
「日本人の使い方をよく聞き真似をする」
というのは一番の近道で確実な方法、そして運用力をつけるには最適の方法だと思います。

ただただ数ある言葉とにらめっこし、「覚えるぞ!」と努力しても、
受験生ならまだしも、そうでない人にはモチベーションを下げる原因にしかなりません。

少し考え方と学び方を変えるだけで、大きな効果が期待できるはずです。

同僚や知り合いに日本語で困っている外国人がいるという方は、
ぜひアドバイスをしてあげてほしいと思います。

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