日本語は外国語

外国人の時制の意識

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日本語教育の専門的な観点からではなく、あくまで一般企業内で外国人に接した時に聞くであろう日本語の間違いと、なぜそれが起こるのかについて、これまで多くの留学生を見てきた日本語教師としての分析をわかりやすく述べたいと思います。

社内でのコミュニケーション改善に役立てていただければ幸いです。

【時制(じせい)】

時称とも。動詞における時間的関係を示す文法範疇(はんちゅう)。絶対的時間関係と必ずしも対応するものではなく,ある点を現在とすれば,その前・後が過去・未来となる。過去および未来を基準として定めれば,それぞれにまた前・後が考えられる。日本語のように現在・未来が未分化の非過去と過去のみを基本的に区別する言語,またインドネシア語のように動詞が時制による活用を行わない言語もあるが,〈明日〉〈今〉など時の副詞により時間表現上支障はない。および相と密接に関連する
―百科事典マイペディア

 時制とは

「時制(じせい)」という言葉自体、あまり馴染みがないかもしれませんが、
「現在形、過去形」という言葉なら一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

日本語では、「非過去(ル)」と「過去(タ)」の二つの形で時制を表します。
(英語には、過去・現在・未来それぞれ違った形がありますが、日本語は現在と未来は同じ形で表します)

レポートを書きます。

レポートを書きました。

私たちが聞くと、まったく違う二つですよね。

上の文が「現在形」、下の文が「過去形」です。

日本語では「現在形」はこれからの行動を表すので、
「書きます」は未完了の動作ということになります。

一方、下の文は「過去形」になりますから、
もうすでにレポートは「書き終わった」という意味です。

過去形を持たない言語

このように時制を非過去と過去で表すのは日本語の文法的な決まりですが、
例えばインドネシア語には過去を表すための動詞の変化はありません。

中国語も時を表す副詞(今日、明日、昨日など)で時制を表します。
(中国語にはもっと複雑な決まりがあるようですが…)

どちらの言語も、いわゆる、日本語で言うところの動詞の「過去形」がないんですね。

そういう母語を持つ外国人が日本語を学ぶと、この時制で苦労します。

時制の間違いによるトラブル

また、この時制を間違えて使うとトラブルの元にもなりかねません。

特にビジネスシーンではトラブルになる可能性はより高くなると言えると思います。

なぜなら、まだしていないのに「した」と言ったり、
もう終わったのに「これからする」と言うことは、
正反対の情報を相手に与えてしまうことになるからです。

日本語では、「ます」は未完了の動作を表す言葉だと、前述しました。

上司:「報告書、できた?」

部下:「はい、もう今朝できます

ん?「もう」?「できる」?

できたのか、まだなのかわかりません。

「今朝」と言う言葉があるので、
おそらく終わったということが言いたいのだと推測はできますが、
大事なことなら発言した本人にもう一度確認しなければなりません。

会話でならすぐに確認することはできますが、
メールや書類だともう一度連絡をしたり、メッセージを送るという作業が必要になり、
手間が一つ増えてしまいます。

仕事上の効率を考えても無駄な手間ですし、
取引先などとのやりとりだったら、相手側を煩わせてしまうことになりますね。

「企画書は昨日出します」

「もう、部長には相談します」

「さっき先方に連絡します」

「貴社からのご提案を検討しますが、ぜひ取引を続けさせてください」

???ですね。

思わず「どっち!」と叫びたくなってしまいます。

最後の文などは、書かれている文字通りに受け取ることもできてしまいます。

これから検討するが、取引だけは続けたい

本来は、

検討した結果、取引を続けたいということに決まった

ということを伝えたいので、
「ご提案を検討しましたが」としなければなりません。

(メールは昨日既に先方に送った)

「先方にメールは?」

A「昨日、送ります」

B「送ります」

Aのように過去を表す言葉「昨日」が入っていれば、
「え、どっちなの?昨日送ったの?」と確認することはできます。

ですが、Bのように言われると会話からは間違いだと気づくことはできません。
「まだ送っていないんだ」と解釈されて終わりです。

それどころか、「送ります」だけだと、
「わかってるよ、これから送るよ」と、
ちょっと逆ギレしている感じさえ出てしまいますよね。

このように、怖いのは意図したことと違うことを言っているのに
会話や文脈に合っているため間違って伝わってしまう場合です。

その場合、我々日本人でも意図を汲んでわかってあげるというのは不可能です。

これまでの記事の「助詞」や「否定表現」などのように少しずつ直していく、
という余裕はなく、業務上の弊害や大きなトラブルに発展しかねません

「したのか、していないのか」が重要な場合は、
その都度確認をするしか方法はありません。

手間はかかってしまいますね。

日本人としてどう捉えるべきか

母語に過去時制という概念がない外国人にとっては、
過去を表す時に動詞の語尾を変化させるのは大変なことです。

過去時制の意識のある我々日本人でも、
英語の動詞変換には悩まされてきましたよね(不規則変換には特に)。

ご自分の経験を思い出せば、
意識があっても簡単には使いこなせない難しさは理解できると思います。。

初めにも書きましたが、大事なことは
「どっちなんだよ」と感情的に問いただすのではなく、

・過去時制を持たない言語がある

・動詞を変換する習慣がない国がある

ということを知り、まず相手に理解を示すことです。

その上で、「終わりましたか、まだですか」などと言葉を変えて確認をしてあげてください

言い方が間違っていたら、「それじゃあ、〜ました。ですね」と
正しい言い方をさりげなく教えてあげてください。

そうしながら少しずつ本人に過去時制の意識を持ってもらうようにしていくのがベストだと思います。

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