企業の日本語

日本で働く外国人材の現状と現場からの声3 〜リモートワーク編〜

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リモートワークという働き方

リモートワーク
テレワーク
在宅勤務

すっかり働き方が変わってしまった昨今、頻繁に耳にするようになった言葉です。
もっとも、在宅でも成立する職種、業種、業務に限られるので、すべての企業がこのような形態を取っているわけではありません。

外国人材の多いIT関連の企業では、現在(2020年12月)でもリモートを推奨し、出社するには申請と許可を必要としたり、いつまでリモートを続けるか決めかねている企業も多いようです。

ミーティングや打ち合わせは基本的にはオンラインで行われ、それ以外の社内コミュニケーションはSlackなどをこれまで以上に活用して情報の共有をしていると聞いています。

 

外国人材にとってのリモートワーク

さて、いよいよ本題に入ります。

この「リモートワーク」、外国人材にとってはどのようなものなのでしょうか。

今現在、僕のクライアントはIT関連企業にお勤めの方が多いのですが、彼らからはこんな「ぼやき」をよく耳にします。

 

「家に一人でいても仕事が捗らないから出社したい」
「オンラインミーティングでやり取り(日本語)のリズムについていけず困って いる」
「社内メッセージ(日本語)のやり取りが苦痛…」

 

「苦痛」の正体

今回は実際に日本で働く外国人材からの聞き取りを元に、この中の「社内メッセージのやり取りが苦痛」という悩みを取り上げてみたいと思います。

 

まず、いったい何が「苦痛」なのでしょうか。

 

“メッセージなら考えたりわからない日本語を調べたりする時間が確保できるから外国人にとっては助かるんじゃないか”

 

そう思う方が多いかもしれません。

しかし、言語というのは会話という形なら気にならなかったり、流してしまえることでも文字として残ると言い回しや間違いが気になってしまうという特徴があります。

皆さんも、大事なメールなどは何度も書き直したり、一度寝かせてしばらくしてからまた考える、なんていう書き方をしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
会話をする時よりも相手への伝わり方や言葉の間違いなどに気を遣っているからです。

外国人が「メール」ではなく、「メッセージ」を日本語で書く、社内コミュニケーション用のツールを使用してやり取りする場合はオンタイムでのやり取りも多くあるはずです。
このオンタイムでのやり取りが特に大変だ、という声を多く聞きます。

先ほどの「考えたり調べたりできる」というのは、「考えたり調べる必要があるのに会話に近いリズムでやり取りしなければならない」と言うこともできます。

私たちが外国語でそれをやることを想像してみると、ちょっと恐ろしいですよね。

また、IT関係の企業で働く高度人材となるとそれなりの経験があり、ある程度の立場にある人がほとんどです。
関わる業務や人が多いため、やり取りの量も必然的に増えてきます。
当然、チャット並みのリズムでメッセージを書き込むことも頻繁にあるでしょうし、相手によっては親疎を踏まえた日本語の使い分けに気を遣わなければならないこともあるでしょう。

本来の業務以外でストレスばかりが増え神経をすり減らすことになります。
これが先ほどの「メッセージのやり取りが苦痛」という声の正体です。

 

「省略」と「言い回し」

また、日本語の使い方に関しても悩みを抱えている外国人材は多くいます。
ビジネスシーンにおける日本語の使い方や、独特の言い回しです。

先日、某IT関連会社にお勤めの方からSOSをもらいました。

以下は彼女がやり取りした業務内容に関するメッセージなのですが、日本人からの返信の意味がわからないという内容でした。

 

外国人材:内容が共有される範囲として監査役も含まれますか。 
                    代表取締役、取締役はこれに当たるという認識ですが。

   日本人:監査役はいいのではないかと思います。

 

いいのではないかと思います

これは、監査役に共有したほうがいいのか、しなくてもいいのか…
なるほど、これは確かに不親切だと思いました。

不親切の原因は、「省略」と「言い回し」です。

まず、「省略」について考えてみます。
「いい」には単なる肯定の意味のもありますし、必要ないことを肯定する意味もあります。

単なる肯定だと、

「そのプランでいいと思うよ」
「明日の3時ですか。いいですよ」

必要ないことを肯定する使い方だと、

「(それはしなくて)いいよ」
「(許可は取らなくて)いいよ、いいよ」

「いい」だけで終わらせてしまうと、外国人にとってはどちらの使い方なのかわからず混乱の元となることがあります。
ハイコンテクストである日本語の独特の「省略」です。

これが対面であればノンバーバル、つまり言語以外の情報である表情や視線、声のトーン、ジェスチャーなどから相手の意図は類推しやすくなりますが、文字情報だけから判断するとなると日本語ノンネイティブにはかなりのストレスです。

 

SOSのあった彼女が受け取ったメッセージは、

 

「監査役(に)は(共有しなくても)いいのではないでしょうか」

 

という( )部分を省略した形のメッセージで、必要ないことを肯定する方の使い方だったのです。

我々日本人には何の問題もない文章に見えても、外国人材には決してそうではないことがおわかりいただけましたでしょうか。

 

もう一つ、「のではないか」という言い回しについても触れておきます。

これは控えめに自分の意見を言う時に使う表現です。
もし、文字どおり「いいのではない」+「と思います」と考えてしまったら、「悪い/よくないと思います」という意味になりますよね。

伝えたい情報(「〜と思う」)と真逆のこと(「〜ではないと思う」)が伝わってしまうことになります。

これは大きなミスコミュニケーションです。

彼女の同僚の日本人はどのように書けばよかったかというと、

 

「(私は)監査役には共有をしなくてもいいと思います」

「(私は)監査役には共有する必要がないです」

 

これなら、ほとんどの日本語レベルの外国人に伝わるはずです。

 

円滑なコミュニケーションのために我々ができること

社内や業務上のミスコミュニケーションの原因の一つは、「わかるだろう」という日本人の根本的な意識です。
もう少しわかりやすくいうと、「伝わる方法」ではなく「伝える方法」しか考えていないのです。
自分のことしか考えていない、といったら言い過ぎでしょうか。

もし相手が同じ日本人なら何の問題もありません。
しかし外国人と共生していかなければならない立場にある方は、日本人と話すときと同じマインドではなく「伝わり方」を第一に考えるべきなのです。

 

このような環境の中で、外国人材はリモートワークに伴う新しいコミュニケーション形態に日々苦労しながら頑張っています。

問題は日本人がそれに気づいていないこと、コミュニケーションがうまくいかないのは外国人材の日本語力のせいだと思っている方が多くいることだと思います。

それなりの立場、外国人材の査定など評価する立場にある人でさえ、そんなメンタリティーの人が多くいるのは非常に悲しく、また腹立たしいことです。

「この日本語はどんな意味なのだろうか」「自分は何を言われているのだろうか」という業務とは直接関係ないことに外国人材が時間をエネルギーを使っているとしたら、これほどもったいないことはありません。
せっかくの優秀な人材が会社の利益にならないことにエネルギーを使っているわけですからね。

業務上、なかなかそこまで気を遣うことができないという日本人社員もいらっしゃるでしょう。
そういう方は、せめて「わかって当たり前」という考えは捨てるところから始めてほしいと思います。

お互いが歩み寄って初めて双方の利益に繋がり、将来的には会社の利益としてフィードバックされるというのが理想的ですし、またそうあるべきだと思います。
日本人側がほんの少し考えたらを変えるだけでミスコミュニケーションは回避でき、コミュニケーションや業務が円滑になります。

この記事をお読みいただいたみなさんにとって、外国人との付き合い方を考えるきっかけになればと切に願います。

 

すぐに始められる「伝わる日本語」はこちらを参考にしてみてください。

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