にほんご分析

「私」と「オレ」と「僕」から見る日本語の複雑さ

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仕事で日本語を教える時は「私」
家族や友達には「オレ」
それ以外は全て「僕」

自分は普段こんなふうに使い分けています。
男性の1人称は、使い方が人によって違うので非常に興味深いものだと感じます。
また聞く側にとっても、相手がどれを使うかで大きく印象が変わります。

自分の勝手な、
そして主観的なイメージだと、

それなりの年齢と見た目の男性が「僕」と言うと、なぜか素敵に聞こえる
いい年をしたおじさんがオフィシャルな場で「俺」と言うと品位を疑ってしまう
自分では距離が縮まったと思った相手にいつまでも「私」で来られると、
「あ、まだ距離あるなぁ」と自分の距離の取り方を見直そうと考える

更に、「僕」と言う言葉を掘り下げてみるとおもしろいことがわかります。
発音によって印象が変わるんですね。

ボ⤵︎ク だと子供っぽく聞こえる
ボ⤴︎ク だと大人が使ってもさほど違和感なく聞こえる

「僕」を日常的にお使いの方、上の発音で使われていたらお許しください。

では、日本語学習者にとってこれら一人称を表す言葉はどのようなものなのか。
そして、どのように使い分けているのか、です。

身近な外国人の方をご想像いただくと、
「私」を使っている方が多いのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

学習過程ではまず「私」でインプットされますし、ほぼすべての日本語教材も「私」。
1番安全で、どこででも通用する言い方ということなのでしょう。

ただ、学習期間が長くなっても、またどんな場面や相手でも、
この「私」がなかなか抜けない方に結構お会いします。
決して、言い方を変えなければならない使い方ではないのですが…

「僕」や「オレ」の用法のハードルが高いという事実も確かにあります。
日本人でも、成人の場合「僕」を使うことに抵抗感を持つ人もいるでしょう。

しかし、難しくてリスクがあるからという理由で「私」しか使えない、
というのはなんとも残念な気がするのです。
せっかく色々な言い方があって、印象の違いが出せるのに…
こう思ってしまうんですね。

 “基本安全の域を出ず、また個性も出ない

僕自身が使い分けているのは、
場面や相手によって自分をこう見せたい、という「セルフブランディング」の意味もあったりします。

そういう面も日本語を学ぶからには皆さんに楽しんでもらいたい。
そんな想いがあります。

ただ、日本人でも使い方の分かれる一人称。
個人個人の好みや認識、バックグラウンドや属する環境によっても
大きく変わります。

「教える」というアプローチではなく、
(それはおそらく適当ではないと思います)
「見せる」という方法で彼らに知ってもらい、
彼ら自身が使い方を決めるというのが理想的なのではないかと思います。

そのために私たちができること。
なるべく彼らとの接点を増やすこと。

触れる機会が多ければ多いほど帰納的に判断することができる材料が増え、
語学の学習には有効であると思います。

さて男性の皆さん、
「私」「オレ」「僕」をどのように使い分けていますか?

*合わせてお読みいただきたい記事はこちら。
“チャック”という日本語。これって何語?

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