にほんご分析

許可?指示?依頼?わかりにくくすることが丁寧につながる日本語

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パソコンを使ってもいいですか。
パソコンを使わせていただいてもいいですか。
パソコンを使ってもいいですよ。
メールを送ってもらってもいいですか。
メールを送らせていただいてもいいですか。
メールを送っていただいてもよろしいでしょうか。
ここに置いてもかまいませんか。
ここに置かせていただきたいんですが。
ここに置いていただけませんか。
ここに置きたいんですが、よろしいでしょうか。

Q.誰がする動作でしょう?

ここにあげた10の文は、日本語学習者が〈許可〉の用法を学ぶ課でブレインストーミングとして提示さされているものです。
許可をもらう、許可を出す、依頼をする際の言い回しです。

問題として出されているぐらいですから納得なのですが、「誰が?」と聞かれると我々ネイティブでも一瞬「ん?」考えてしまう文ばかりですよね。

これらの文をノンネイティブ目線で考えてみます。


誰がするの?

授受表現は非常に難しい日本語表現の一つです。

「あげる」「もらう」「くれる」

動作主が咄嗟に理解できず、コミュニケーションで苦労するノンネイティブの人は多くいます。文中に主語がないことも多いですし、同じことを言っていても主語が変わることも。

・(Aは)メールを送ってくれました。
・(私は)メールを送ってもらいました。

【A】→(メール)→【私】

Aから私にメールが送られた。
この事実はどちらの文も同じです。 ただ、主語が変わることで視点が変わります。

もう少しわかりやすく言うと、「Aの話をしているのか、私の話をしているのか」という違いです。「誰からの依頼なのか」などの細かい違いはあるのですが、そこまでくると「ニュアンスの違い」の域になります。そしてノンネイティブが「ニュアンスを理解する」のは、はっきり言って苦行の域。私たちが英語のニュアンスを正確に理解できるか、を考えたら容易に想像できますよね。

ノンネイティブに対する授受表現を伴う〈依頼〉や〈指示出し〉は、別の表現を用いながら、また復唱してもらうなどして伝わっているのかの確認をしっかりとすることをお勧めします。

自分は何をすればいいの?

「てもいいですか」
「てもいいですよ」
「でもかまいませんか」
「〈使役〉ていただけますか」

〈授受表現+上記表現(後続句)〉

このダブルパンチは、自分が何をすることを相手が求めているのかが非常に分かりにくくなる表現の仕方です。

ここにさらに「貸す/借りる」「見る/見せる」などが絡んでくると、トリプルパンチ。 使う言葉自体は初級レベルでも、超級レベルのコミュニケーション力が必要になります。

日本語の難しさというのはこういうところにあるんですね。

難易度  言葉自体< 言い回し

質問(許可を求められている)なの?命令(指示)なの?

冒頭の10の文は、「~か」という質問の形で終わってるものがほとんどです。

日本語の厄介なところの一つは、質問の形、しかも敬語などを使ってソフトに伝えているのに実際の意味は「命令に近い指示出し」の用法が存在すること。

上記6つ目の文。

・メールを送っていただいてもよろしいでしょうか。

これは「依頼」であり「指示」。

「~でしょうか」というソフトな質問ですが、伝えているのは「メールを送ってください。送ってくれないと困る」に近い。発話者のほうが立場が上なら、間違いなく「依頼」ではなく「指示」。

文字通りの意味で使っていないような日本語表現。
ここに混乱するノンネイティブは非常に多いです。難しい言葉を知っていたり、使って話したりすると「すごいなぁ!」と思うのは自然なことです。

実際、彼らはすごいです。

でも、実は冒頭のような表現を涼しい顔で使いこなし、また正確に理解できる人も相当なコミュニケーション能力を持つ「上級者」と言えます。身近にそんな人がいるという方、その方のコミュニケーション能力は相当なものですよ。

〈外国語としての日本語〉

こんな視点で見ると日本語の難しさは “言い回し” とも考えられます

*依頼やお願いに伴う「なるべく」や「できるだけ」という表現の曖昧さについてもこちらの記事で書いています。

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