外国人に優しい日本語

外国人に伝わりやすい日本語とは? PART3

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すぐにできる日本語の見直し

 

11「なるべく・できれば」などを使った指示は避ける

別記事(【曖昧に聞こえる『なるべく』と『できるだけ』】)でも書いていますが、
私たち日本人が「なるべく・できれば」などを使って相手に指示や依頼をする場合、
ほとんどの方が「〜しろ・〜するな」という意味で使っているかと思います。

これは一つに、指示や依頼の表現を和らげる意図からくるものと考えられます。

 

A この報告書、今日中に仕上げてください。

B この報告書、なるべく今日中に仕上げて欲しいんですけど。

 

Bを使っているという方が多いのではないでしょうか。
僕自身も言葉に「指示・依頼」という機能を含める場合、直接的な表現は避けます
それが普通ではないでしょうか。

しかし、日本人には普通であることが外国人にもそうだとは限りません。
言葉だけではなく背景に文化的要素も関係している場合には、ミスコミュニケーションが起こる確率は高くなります。

「なるべく・できるだけ」を辞書で調べると、

 

可能であればそうしたい。そうして欲しい。       −三省堂

となっています。

この意味の通りに受け取ると、「可能でなければできなくても構わない」とも解釈できます。

 

日本人:この報告書、なるべく今日中に仕上げて欲しいんですけど。
   (今日中に仕上げてくれ)

外国人:わかりました。なるべく今日中に仕上げます。
   (今日やってみて、できなかったら明日でいいのかぁ)

 

しかし、間違った解釈はしていなくても、コミュニケーションには失敗してしまっています。

このように曖昧な表現を使うことが多い日本人。
私たちはそのような表現を知らず知らずのうちに使っていることを自覚し、
外国人に対して使うと意図が伝わらない可能性もあることを知っておくべきです。

それがお互いのための「伝わる」コミュニケーションへの近道となると思います。

 

12最後まで話す

 

市役所などで)

外国人:え、保険証はもらえませんか。
日本人:書類が足りないからな…

 

これでは「保険証はもらえない」のか、「書類を揃えてまた来て」なのか、「他の方法を考える」のかわかりません。

わからないので、もう一度聞きます。

「あの…保険証はもらえませんか」

そうすると、不快に感じ、対応が悪くなる職員がいます。
非常に残念なコミュニケーションですが、簡単に防げるミスコミュニケーションです

 

外国人:この申請書はどうすればいいですか。
日本人:あ、それは田中さんに。

 

こちらも、田中さんに「聞いて」なのか、「渡して」なのか、「送って」なのか、言わずに終わってしまっています。

教えてあげている日本人の頭の中には明確な伝えたいことがあるのでしょうが、
「言わなくてもわかるだろう」という気持ちから、後半部分を省いてしまっているのです。

 

言わなければわかりません

 

外国人に大事なことを伝える時は、しっかり最後の指示、忠告、お願いの部分(機能語)まで言ってください。

受け取る側もそうですが、指示を出す方にも気をつけるべきことはあるのです。

 

13主語を省略しない

 

A 好きな映画は何?

B あなたが好きな映画は何?

 

二人で話しているとしましょう。
上のA、Bどちらを使いますか?

Bを使うのは外国人に多いと思いませんでしたか?

 

日本語は他の言語と比べてもハイコンテクストな言語だと言われています。
文脈依存が強いんですね。

簡単にいうと、状況から推測できるような情報は省いてしまうということです。

その中でも主語の省略は、日常的に行われています。

例を挙げてみます。

 

上司:時間が取れたら、午後ミーティングしよう。会議室の予約頼む。

 

医者:来週の木曜で予約取っておくから、受付でカードに時間書いてもらって、また来週来る、と。

 

文脈やその他の非言語情報などから、相手が伝えたいことはある程度類推できてしまうのが私たち日本人です。

上の2つの例は、次のような意味でしょうか。

 

上司:私たちお互いが午後に時間が取れたら、午後一緒にミーティングをしよう。
そのために使う会議室を予約しておいてもらえるかな。

医者:来週の木曜日の予約を私が取っておきます。
あなたは帰るときに受付でカードを出して時間を書いてもらってください。
それでは、また来週来てください。

 

長いです…

日本人にこんな話し方をしている人はいませんよね。
上のように言うと情報が多すぎてわかりにくく、聞いている人が「くどい」と感じるからでしょう。
不必要だと感じるような言葉が多く含まれてしまっています。

しかし相手が外国人の場合、特にローコンテクスト言語を使う人たち(ドイツ語など)にとっては、
省く言葉が多いと何が何だかわからなくなってしまうのです。

 

それは誰がするの?…

自分は何をすればいいの?…

 

これではコミュニケーションに不安を感じてしまいますよね。

外国人と話すときは、きちんと主語(誰が/何が)をつけて話すように心がけましょう。

 

14漢語は避ける

公的機関や銀行、病院などでは漢語の使用が自然と増えます。
書類はもちろん、口語でもよく耳にします。
難解な言葉を使われ戸惑った、という経験はありませんか。

漢字圏の国の人であれば、音読みの多い漢語は意味を類推しやすいかもしれません。
しかし、その他の国の外国人にとっては、ただの「難易度の高い語彙」でしかありません。

 

「記入してください」→「書いてください」

「これで終了です」 →「終わりです」

「提出してください」→「出してください」

「提示してください」→「見せてください」

 

相手に伝わらなければ、コミュニケーションは成立していないのと一緒です。

特に指示やお願いをする場合はこのように言い換えるだけで伝わりやすくなります。

ちょっとした気遣いを心掛けてほしいものです。

 

15文を足したり簡単な言葉で言い換えて確認する

日本人に対する言い方が、外国人にも同じように伝わるとは限りません。
彼らの日本語能力には差がありますし、生活環境、学習過程も様々です。
ですから、私たちは「誰にでも伝わる日本語」で話すべきです。

 

A:今週中に仕上げてください。

(+来週ではダメです。金曜日までに全部やってください。)

 

A:お酒とシャワーは控えてください

(+お酒を飲まないでください。シャワーもダメです)

 

ただ「今週中」だけでは、わからない人もいます。

「毎朝」「翌週」「来月」などの時間を表す言葉や、
「控える」「食後」「一回一錠」などの病院などで使われる言葉を知らない人は多くいます。

日本語を使ったコミュニケーションにあまり問題がない人でも意外な言葉を知らない、ということは結構あります。

ですから、このように別の言い方をした言葉を足してあげるとミスコミュニケーション防止にもなりますし、
確認や念押しにもなりますので大事なことを伝える時などにはぜひ気をつけてみてください。

*こちらも参考にしてください。
外国人に伝わりやすい日本語とは? Part1
外国人に伝わりやすい日本語とは? Part2
外国人に伝わりやすい日本語とは? Part4

 

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